Case.01 部分入れ歯が合わず、歯ぐきが腫れてきた…

  • ドイツ式入れ歯
  • 咬み合わせ

「部分入れ歯が噛みにくい、磨きにくい、口の中がどうも調子が悪い」というご相談は多いです。こうなってしまう原因は、咬み合わせのバランスと、お口の掃除のしづらさにあると考えています。

ある70代の女性は、留め金式の部分入れ歯を使っていて、入れ歯の留め金を引っ掛けていた歯の歯茎が歯周病と虫歯になっていました。あちこちの歯が弱っていて、残せそうな歯は4~5本しかない状態で、歯磨きもしづらくなっている様子でした。「とにかく何とかしてほしい、しっかり噛みたい」というご希望がありました。

多くの歯が弱っていて、残せない状態でした。
丈夫な歯5本を残しました。

歯が数本残った場合、留め金式の入れ歯をすることが一般的です。留め金式の入れ歯を使うと歯が一本づつグラグラしてきて次々に抜けてくる。また残った歯を支点にして入れ歯が沈むのでいまいち嚙めない。このような経験でお困りの方は思いのほか多いです。

インプラントはしたくないとのご希望でしたので、残せる歯は残しながら、掃除もしやすく、全体でしっかり噛めるようにする方法を考えました。採用したのは、下には自由診療のドイツ式入れ歯、上には自由診療の総入れ歯を入れ、金属床で補強しました。

ドイツ式入れ歯では、残っている少ない歯を、その歯に負担を掛けることなく活用できます。2~3本でも自分の歯が残っていると、その歯を支えとして、入れ歯の横揺れを防止できるのです。動きが少なく安定感が増すので、通常の入れ歯よりも噛み心地が格段にアップします。留め金式の入れ歯のように、歯に負担をかけることもないので、次々に歯が抜けてくることもありません。

この方は、初めに今の義歯を改造し治療の間の入れ歯としました。その次に残っていた歯を生かしながら新義歯を作り初め、約1年ですべての治療を終え、今も当院にメンテナンスで来院し、なんでも噛んで食事を楽しんでいます。

私はいつも治療を始めるにあたって、まず「いまこの状態になっている原因は何か」を重点的に考えます。年齢的に掃除がしにくくなっている様子であり、銀歯やほかの金属の歯があり、歯も磨きにくく粘膜が腫れていました。そこで金属は金合金の一種類だけにまとめ、掃除し易いシンプルな設計を心がけました。また、歯周病菌の悪玉菌も基準値以上検出されたので、歯種病治療を行い悪玉菌を減らしてゆきました。

ドイツ式入れ歯はごくシンプルな構造ですが、咬み合わせだけは徹底的にこだることが、良い咬み心地につながります。

入れ歯の完成時、きれいな歯が装着されてお帰り頂きました。
ところがその翌日、入れ歯がすごく痛いと連絡があり、すぐにお口の中をみました。その日は応急処置でなんとか対応しまいたが、結局私の製作時に採取した咬み合わせのポジションが、使いやすい咬み合わせとは異なることが分かりました。
この咬み合わせのリカバーをどうするか散々悩みました。結局上の入れ歯を作り直すことが、入歯の質、患者さんへの負担の点において良いと考え、作り変えました。

作り直すと、その日からしっかり噛めるようになられました。
作り直しは決して良いことでありません。しかし人が行う作り直しはゼロにはなりません。大事なことは問題が起こった時に、その原因を適切見極め、きちんとリカバーし、次の治療につなげることが大事だと思います。
入れ歯治療に限らず歯科治療は咬み合わせに始まり咬み合わせに終わるといっても過言ではありません。改めて、咬み合せは大切さを痛感したケースとなりました。

出来上がった上の総入れ歯、下のドイツ式入歯
入れ歯を装着した様子。上は総義歯、下はドイツ式入れ歯。
金の内冠がちょうど茶筒の役目をし互いの歯を守りながら、入れ歯のズレを防ぎます。

■治療期間と費用
・治療期間:1年
・費用や治療法はドイツ式入れ歯のページを参照ください

■リスクと副作用 
残せない歯の抜歯は外科処置です。一般的な外科処置の偶発症が起こる可能性があります。留め金式の入れ歯よりも全体でしっかり噛める入れ歯ですが、異物感を極度に感じる方は入れ歯治療を受け入れられない場合があります。