70代前半の男性Dさんのケースです。

上は総義歯(ドイツ式のシュトラック総入れ歯)、
下はズレない入れ歯(インプラントを2本応用したドイツ式のシュトラック総入れ歯)
で治療しました。

治療後のDさん

来院時、Dさんは上アゴに歯は残っていましたが、歯周病でほとんど全ての歯がグラグラし今にも抜けそうでした。
下は4年前に総義歯にされたそうですが、全く咬むことが出来ていません。衰弱して、とても元気のない様子で当院にお見えになりました。

毎日、一日中イライラし、夜も寝付けず、家のなかでもジッとしていられずウロウロしているとのこと。 
お話したところ、「物が噛めなくて食事が怖い」とおっしゃっていました。

自分の歯が健康だった時と同じように、硬いものが噛めるようになりたい、というのがご希望でした。

元気が失われているとはいえ、70代前半はまだまだ若い年代です。
しっかり噛めるようになって、元気になってもらいたいと思いました。

治療前のDさん

治療の相談にはDさんの奥様も同席されました。
奥様は当院での治療には否定的な印象をお持ちのようでした。

治療法として選択肢はいろいろとありましたが、
・上は歯周病の歯を全て抜きドイツのシュトラック総義歯に、
・下はドイツのシュトラック義歯とインプラントとを繋いで「ズレない入れ歯」(2本のインプラントと総義歯をスナップで繋いだ入れ歯)にすることをご提案いたしました。

手術に不安をお持ちでしたので、手術中は歯科麻酔医に同席してもらい、点滴でうたた寝の状態を作り治療する計画にしました。

最後に奥様から「その治療であれば主人はしっかり噛めるのですか?」と聞かれました。
私は「噛めるようになりますよ」とお答えしました。
すると、いままで難色を示されていた奥様が、
「では治療をお願いします。」とおっしゃったのです。
これで治療案がまとまりました。
Dさんも奥様の決断の速さにはとても驚かれているご様子でした。

初めに、痛みのあった左上のぐらぐらの歯を抜きました。

次に2本のインプラントを下に入れ、手術時間は1時間です。
歯科麻酔医が同席し、点滴麻酔の「循環と呼吸の安全管理」を行います。
Dさんは治療中、全く怖くなかったそうです。

インプラントを入れたその日から、下の入れ歯は全くズレなくなりました。

その次に上の残せない歯を抜きます。歯を抜いたその日に、上はリハビリ用の総入れ歯を装着しました。このリハビリ用の総入れ歯はDさんが歯を全て抜くことにより生活に支障が出ないよう、事前にお作りしておいたものです。

抜歯した穴がなくなるのに5カ月待ちました。
穴がなくなるのはとても早かったです。
この頃になるとDさんは、診療台にも長時間座れるようになり、倒すことが出来なかった診療台も水平位まで倒せるようになっていました。

食事もできるようになり、私に対して「快適ですよ、入れ歯の名人、名人頼むよー」と笑っておっしゃるようになっていました。

いよいよ最終の入れ歯の製作です。

「上下同時印象法」を使って総義歯をお作りしました。
この上下同時印象法は、お口のなかのボリュームをそのまま採ることで、異物感が生じない入れ歯が作れます。

「型どり2回→仮合わせ→完成」
合計4回で治療は終わりです。

最終の上下アゴ同時印象を終え、ドイツ製の咬合器に装着したところ
完成した入れ歯。人工歯もピンクの部分も厳選したヨーロッパの材料を使用しています
この人工歯は10年、20年と使用してもすり減りが驚くほど少なく、ピンクの部分は薄いのに強度があり、精度、装着感、耐久性の高さが特徴です

治療を終えて次の来院時には、「誰の口やねん!っていうくらい食える!」とお褒めの言葉を頂きました。

治療前後のレントゲン。下の義歯は2本のインプラントと専用のスナップでくっつけます

【動画】噛める喜び! 治療後のDさん①

治療前の食生活は、奥様がいつもDさんの食べられるものを選んで料理していました。
今は何でも食べられるようになったそうです。
奥様よりも食べるのが遅かったDさんですが、今では奥様より1.5倍早く食べられるようになり、しっかり噛めているそうです。

咀嚼判定のグミのテストでは治療前の3が7まで回復しています。

パンも食パンの柔らかいところだけなく、食パンの耳や、硬いフランスパンも食べられるようになりました。
ラッキョウが好きで毎日召し上がっており、パリパリ音がしてこれがいい音がするんです、とのこと。お肉も、特にステーキが好物で「肉の時のお酒は芋焼酎!、、、ロック!」「量はそんなに飲まないけど一緒に食べるのが最高!」と喜んでいます。

【動画】噛める喜び! 治療後のDさん②

Dさんはたくさん食べるようになりました。でも太ってはいません。生活も規則正しくなったせいか体重は1キロだけ増えただけです。
以前あった味覚の異常はなくなり、気分も優れ、一日中イライラして家の中をウロウロすることもなくなったそうです。
横になったらすぐに眠れるようにもなりました。

以前は杖をついて永井歯科に来院されていましたが、今では杖がなくても歩けるようになりました。

咬み合わせが正しくなると、頭位が正しい位置に定まります。
頭は5~6キロ、ちょうどボーリングの玉くらいの重さがあります。頭位が定まると姿勢が良くなり、歩行が安定します。

【動画】入れ歯の着脱の様子

しっかりと噛めるようになり、食事を楽しみ、生活を快適に楽しんでいらっしゃるDさん。

保険自費に限らず入れ歯はどこの医院でも作られています。いろいろ渡り歩いて入れ歯をたくさん作ってもしっかり噛めて満足している方は中々お見掛けしません。
私は入れ歯でもしっかり噛める、丈夫で長持ちする入れ歯を作りたいと常に探求しています。永井に任せたら間違いないねと言っていただけるように、一つ一つ丁寧にお作りしています。
口から始まる健康を手に入れ、今後の人生を奥様と二人で存分に楽しんでいただきたいと思います。

■リスクと副作用
インプラントは外来での手術が必要です。高齢や持病によっては出来ない場合があります。清掃の不良があると天然歯の歯周病に類似したインプラント周囲炎が起こることがあります。

■治療期間 
6カ月(抜歯やリハビリ入れ歯の期間を含む)

■費用 
200万円~。自由診療です。

どんどん歯が抜けてしまった患者さんのお話です。3年の間に歯がどんどん抜けていき、部分入れ歯が大きくなっているのがわかります。

来院時
入れ歯を使って3年
上の奥歯と下の前歯がぐらぐらになって抜けてきました

ご本人は、「ちょっとずつ抜けていっているから、あと2年はもつと思います」とおっしゃっていましたが、お話しているうちに、いまのうち根本的に治療したいということになり、上の歯は当時力を入れていたAGCブリッジ、下はズレない入れ歯で、入歯がズレるのを防ぐために天然の歯3本にスナップをつけて、左にインプラント1本だけ入れることにしました。

なぜ歯がどんどん抜けてしまったのか? 原因は噛み合わせと歯周病だと考えられました。

歯医者さんは大抵、部分入れ歯を「歯がないところ」に入れます。
しかしそれが噛み合わせを悪くする原因になるのです。私も昔はそれが分かっていませんでした。

本来、噛み合わせというのは、上下の噛み合わさる部分が浅いほうがバランスがよいです。上下2ミリくらいの浅さが、横に激突されない、いい深さです。
噛み合わせが深いと、あごが横に動いたとき上下が逃げない、奥歯が離れない、本来あるべきルールから外れた噛み合わせになってしまいます。
しかし、とくに保険診療の入れ歯では、噛み合わせが深いところに、そのまま入れ歯をこの深さで入れてしまうケースが多いです。部分入れ歯を高くして、咬み合わさる部分を浅くしようとすると、全体に咬み合わせは高くなっているので残っている歯は噛み合わさりません。健康保険の治療において、咬み合わせを作るために削って被せを作ることはルール上できません。健康保険で被せものを作れるのは大きく分けて2つの条件だけです。一つは虫歯の歯の形の回復のために被せものをする。そしてもう一つは歯がなくなったところにブリッジをする。ですから健康保険では、全体の咬み合わせをなかなか考慮できず、単純に歯がないところに入れ歯を入れてしまうケースが多いのです。

一つ一つの歯の長さがまちまちで、内に入ったり外に出たり不揃い

結果、上下の咬み合わせとしては、どこかの歯にあたりやすい、避けようと思ってもぶつかってしまう噛み合わせができあがります。一か所に集中して力がかかり続け、その歯はボディーブローのようにダメージを受けてグラグラになっていく。そして歯が抜けて、抜けたところに歯を入れようとまた入れ歯を作り直し、終わりのない治療が続くことになります。

噛み合わせを改善しないまま、歯が抜けたらそこに入れ歯を足す、ということを当たり前に続けていくと、歯はどんどん失われてゆきます。多くの方は、どんどん抜けていくことを不安に感じ、食い止めたいと思っていると思います。
「最後の治療」がしたいと言って相談に来る患者さんも多いです。

最後の治療は、できれば70歳くらいまでにしておくのが理想です。噛み合わせを改善しないまま、歯が抜けたら入れ歯を作り直す、ということを続けていくと、いつまでも治療が続くことになります。最後までその咬み合わせでいくと、いずれ高齢になって通院できないようになります。
そのときに咬み合わせで悩まず、ちゃんと仕上がった咬み合わせをキープする。そのために必要なのが根本的な治療です。

入れ歯で大事なのは、「歯がないところに歯を入れる」ことよりも、正しい咬み合わせを作ることです。この方の治療では、理想の咬み合わせを徹底して追及しました。

治療前:入歯を装着したところ

この方は、向かって真ん中右隣の歯が伸びてきていました。上下の歯の咬み合わせが深く、あごが横に動いたときに上下が逃げない、奥歯が離れない咬み合わせになっていました。そうした点を改善し、お口全体の噛み合わせを整えました。
上顎のインプラントは本数が6本以上で強度が出るのでブリッジの形でしっかり力を受け止める設計にしました。一方、下の歯は入れ歯の形にしました。インプラントと天然の歯の本数から考えて下には強い力がかからないようにしました。天然と入れ歯に、またインプラントと入歯の間には重心を下げた低い位置にスナップを、入れ歯がズレないようにしています。重心が低いと歯にかかる横向きの力が少なくなり、歯とインプラントと入れ歯が長持ちしやすいように工夫しています。

治療終了後。
上の外せるブリッジと下の外せる入れ歯

また上の入歯は今回、歯科医師でなくても外すことができる「外せるブリッジ」にしています。将来介護生活になった際に、介助者の方でも容易に外して掃除ができるような工夫を施した治療を行いました。

将来介助者でも外すことができる外せるブリッジ

70代のうちに根本的に噛み合わせから改善でき、しっかり食べられるようになり、グミによる咀嚼能力測定では、10段階で6まで咬めるようになりました。

治療後3年
治療後3年

咬み合わせ以外にもう1つ、歯が抜ける原因となっていた歯周病も、インプラントを入れる前のタイミングでしっかり除菌しました。咬み合わせと歯周病を改善し、残りの歯を守る治療ができました。

■治療期間と費用
・治療期間1年
・費用や治療法は、はずせるブリッジズレない入れ歯の各ページをご参照ください

■リスクと副作用

インプラントも日常の清掃やメインテナンスを怠ると、天然歯の歯周炎のようにインプラント周囲炎が起こります。お手入れや生活習慣によって長期予後は左右されます。骨や咬み合わせといった局所や全身の状況によって成功率と長期予後は変わります。