症例紹介

他院で断られた「壊れたインプラント」

【case03】50代男性の症例
他院で断られた「壊れたインプラント」

当院には、昔の治療をやり直したいというご相談が多く、インプラントのご相談も一定数あります。
みなさんインプラントは一生ものだと考えて手術されると思います。もちろん、正しく入れてあり、その後もメンテナンスをきちんとしていれば、インプラントは安心して長く使っていただけます。しかし、インプラントが正しく入っていない場合や、メンテナンスができていない場合には、再治療が必要になるケースもあります。

治療前の前歯の様子

50代男性の症例です。
その方は、前歯の見た目が悪いとお困りで、きれいに治したいとのことでした。見てみるとセラミックが4本入っていますが、色と形、歯肉のラインも不揃いで、そのうち1本の歯はインプラントでした。前歯の治療に際して、全体の咬み合わせの検査を行いました。本来は奥歯にも問題があるものの、今回は前歯を治療してゆくこととなりました。患者さんは非常に多忙で治療期間をできるだけ短くしたいということも、ご要望のひとつでした。

患者さんとお話したことは以下の4点です。
1. 色合いの観点から複数本まとめて治療する方が色と形が揃う。
2. 咬み合わせの観点から前歯は奥歯を守る咬み合わせが必要です。特に犬歯がすり減っており、前歯が奥歯を守れておらず、将来奥歯を守る意味から犬歯を含めて前歯6本を治療すべきである。
3. インプラントの歯が長くなっていましたが、インプラントを正しい位置に入れなおさない限り歯茎は長いままで、歯肉のラインは揃わない。
4. 現在のインプラントには珍しく、横ネジがついており、その対応を模索するのに少し時間が欲しい。

入れたインプラントの周りの歯ぐきが下がってきて、周囲の歯の歯茎も下がってきておりとくに目立つ場所ということでお困りでした。


インプラントを入れた歯医者さんには相談されていませんでした。10年以上前に、当時お勤めだった職場の近くで入れたということで、関西のクリニックではなく、医院名も忘れてしまったとのことでした

インプラントを入れるときに重要なポイントは3つあります。入れる位置、方向、深さです。
この男性もそうでしたが、歯が長く見える角度と位置に入ってしまっているケースは多いです。
実際、このようなケースではインプラントを抜いて入れ直すことは多いです。しかし、ご本人の希望ではインプラントは抜かずに治療をしたいとのことでしたので、歯肉ラインの改善はできないことを了承のうえで、現在のインプラントを生かし、人工歯だけ外してきれいに入れ直すように治療計画を立てました。

建築と同じで、どのようなデザインにするのか、始めにきちんと設計を考えてから治療を開始します。

ところが、そこからが苦戦だったのです。

インプラントと人工歯はネジで固定されています。そして、そのネジをはずすドライバーはメーカーによって違います。そのメーカーが、どこのものか分からなかったのです。
インプラントのメーカーは、世界に数百社あると言われています。しかも10年以上昔のインプラントです。全国の歯科医師仲間、メーカーの方、あらゆる伝手をたどりましたが、なかなか確信が持てません。
結局、「このメーカーの、このタイプのネジであろう」と確信を持てるまでに1カ月かかりました。幸い、その時代のそのメーカーのネジを外せるドライバーがうちにはありました。
開院以来各社のメーカーのインプラントを使用し、他院で入れたインプラントにも携わってきたので、当院には器具がたくさん揃っています。それが役に立ちました。

しかし、いざ外す段になったら、もうひとつ壁がありました。なんとネジ山が壊れかけていたのです。力をかけすぎたらネジが壊れて、もうネジを外せなくなってしまうかもしれない。そうなったら結局インプラントを壊して抜くことになるかもしれません。
そのインプラントのネジは直径約1.5㎜程です。その小さなネジ山が壊れないよう、顕微鏡で確認しながら、そうっと慎重に手を動かし、なんとか外すことができました。

実際にネジを外したときの様子。ネジ穴がなめられていて、さらにネジの周囲に亀裂も入っていたため、壊れないよう慎重に手を動かしました。

無事にインプラントから古い歯を外すことができたので、インプラントを生かしてセラミックの歯を新しくしてゆきました。
まず、模型の上で機能面を考え歯のデザインを考えます。この形で患者さんも納得されたので、セラミックを外し、デザイン通りの仮歯に変えてゆきます。
この仮歯で使用していただき、機能と形を実際の口の中でテスト使用します。患者さんも問題なく使えていましたので、最終の歯に入れ替えてゆきました。
またセラミックの色調にも工夫が必要です。今回インプラントの歯にも、残りのご自身の歯にも金属の土台が入っていたので、金属の色で黒っぽくならないように、色が透けにくいセラミックを使用し仕上げることにしました。

下の歯の色を参考に、歯の色を決定。歯茎のピンク色で錯視しないよう、特殊なカメラで写真を撮影し確認しました。
型を取る直前の様子。歯の周囲に異なる太さの糸を2本入れ、1本は残したまま型を取ります。こうすることで技工士が被せ物を製作しやすい、きれいな型が取れます。この手間が被せ物の予後を大きく左右します。
完成した被せ物。
装着されたセラミック
セラミックが装着された口元

患者さんは過去に様々な治療をして来られています。とくに年齢を重ねると、お口の悩みも複雑になってくるケースが多いです。昔の治療に介入するのにも、情報収集と思考を駆使せねばなりません。「冷静に粘り強くあきらめない」こんな気持ちでいつも治療に臨んでいます。


■治療期間と費用
・治療期間:3ヶ月
・費用や治療法はインプラントのページをご参照ください

■リスクと副作用 
ごくまれに被せものセラミックの土台の歯が折れることがあります。ごくまれにセラミックが欠けたり割れることがあります。保証の範囲で対応します。

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