Case.05 歯抜けが止まらない原因に迫る

  • AGCブリッジ
  • ズレない入れ歯
  • 咬み合わせ

どんどん歯が抜けてしまった患者さんのお話です。3年の間に歯がどんどん抜けていき、部分入れ歯が大きくなっているのがわかります。

来院時
入れ歯を使って3年
上の奥歯と下の前歯がぐらぐらになってにけてきました

ご本人は、「ちょっとずつ抜けていっているから、あと2年はもつと思います」とおっしゃっていましたが、お話しているうちに、いまのうち根本的に治療したいということになり、上の歯は当時力を入れていたAGCブリッジ、下はズレない入れ歯で、入歯がズレるのを防ぐために天然の歯3本にスナップをつけて、左にインプラント1本だけ入れることにしました。

なぜ歯がどんどん抜けてしまったのか? 原因は噛み合わせと歯周病だと考えられました。

歯医者さんは大抵、部分入れ歯を「歯がないところ」に入れます。
しかしそれが噛み合わせを悪くする原因になるのです。私も昔はそれが分かっていませんでした。

本来、噛み合わせというのは、上下の噛み合わさる部分が浅いほうがバランスがよいです。上下2ミリくらいの浅さが、横に激突されない、いい深さです。
噛み合わせが深いと、あごが横に動いたとき上下が逃げない、奥歯が離れない、本来あるべきルールから外れた噛み合わせになってしまいます。
しかし、とくに保険診療の入れ歯では、噛み合わせが深いところに、そのまま入れ歯をこの深さで入れてしまうケースが多いです。部分入れ歯を高くして、咬み合わさる部分を浅くしようとすると、全体に咬み合わせは高くなっているので残っている歯は噛み合わさりません。健康保険の治療において、咬み合わせを作るために削って被せを作ることはルール上できません。健康保険で被せものを作れるのは大きく分けて2つの条件だけです。一つは虫歯の歯の形の回復のために被せものをする。そしてもう一つは歯がなくなったところにブリッジをする。ですから健康保険では、全体の咬み合わせをなかなか考慮できず、単純に歯がないところに入れ歯を入れてしまうケースが多いのです。

一つ一つの歯の長さがまちまちで、内に入ったり外に出たり不揃い

結果、上下の咬み合わせとしては、どこかの歯にあたりやすい、避けようと思ってもぶつかってしまう噛み合わせができあがります。一か所に集中して力がかかり続け、その歯はボディーブローのようにダメージを受けてグラグラになっていく。そして歯が抜けて、抜けたところに歯を入れようとまた入れ歯を作り直し、終わりのない治療が続くことになります。

噛み合わせを改善しないまま、歯が抜けたらそこに入れ歯を足す、ということを当たり前に続けていくと、歯はどんどん失われてゆきます。多くの方は、どんどん抜けていくことを不安に感じ、食い止めたいと思っていると思います。
「最後の治療」がしたいと言って相談に来る患者さんも多いです。

最後の治療は、できれば70歳くらいまでにしておくのが理想です。噛み合わせを改善しないまま、歯が抜けたら入れ歯を作り直す、ということを続けていくと、いつまでも治療が続くことになります。最後までその咬み合わせでいくと、いずれ高齢になって通院できないようになります。
そのときに咬み合わせで悩まず、ちゃんと仕上がった咬み合わせをキープする。そのためのに必要なのが根本的な治療です。

入れ歯で大事なのは、「歯がないところに歯を入れる」ことよりも、正しい咬み合わせを作ることです。この方の治療では、理想の咬み合わせを徹底して追及しました。

治療前:入歯を装着したところ

この方は、向かって真ん中右隣の歯が伸びてきていました。上下の歯の咬み合わせが深く、あごが横に動いたときに上下が逃げない、奥歯が離れない咬み合わせになっていました。そうした点を改善し、お口全体の噛み合わせを整えました。
上顎のインプラントは本数が6本以上で強度が出るのでブリッジの形でしっかり力を受け止める設計にしました。一方、下の歯は入れ歯の形にしました。インプラントと天然の歯の本数から考えて下には強い力がかからないようにしました。天然と入れ歯に、またインプラントと入歯の間には重心を下げた低い位置にスナップを、入れ歯がズレないようにしています。重心が低いと歯にかかる横向きの力が少なくなり、歯とインプラントと入れ歯が長持ちしやすいように工夫しています。

治療終了後。
上の外せるブリッジと下の外せる入れ歯

また上の入歯は今回、歯科医師でなくても外すことができる「外せるブリッジ」にしています。将来介護生活になった際に、介助者の方でも容易に外して掃除ができるような工夫を施した治療を行いました。

将来介助者でも外すことができる外せるブリッジ

70代のうちに根本的に噛み合わせから改善でき、しっかり食べられるようになり、グミによる咀嚼能力測定では、10段階で6まで咬めるようになりました。

治療後3年
治療後3年

咬み合わせ以外にもう1つ、歯が抜ける原因となっていた歯周病も、インプラントを入れる前のタイミングでしっかり除菌しました。咬み合わせと歯周病を改善し、残りの歯を守る治療ができました。

■治療期間と費用
・治療期間1年
・費用や治療法は、はずせるブリッジズレない入れ歯の各ページをご参照ください

■リスクと副作用

インプラントも日常の清掃やメインテナンスを怠ると、天然歯の歯周炎のようにインプラント周囲炎が起こります。お手入れや生活習慣によって長期予後は左右されます。骨や咬み合わせといった局所や全身の状況によって成功率と長期予後は変わります。