Case.06 インプラントは絶対イヤという患者さんに応える

  • インプラント
  • 咬み合わせ

奥歯がないために噛み合わせが崩れて、上の前歯(左右それぞれ1番の歯)がグラグラになって開いてきてしまっていた患者さんがいらっしゃいました。

奥歯の支えが少なく、上の前歯がグラグラになり、前に出てきてしまいました。今は透明の接着材料で止めています。
上の前歯2本はぐらぐらになって骨に植わっていません

奥歯には保険診療の入れ歯が入っていました。なぜ前歯がグラグラになってしまったか。左右の奥歯をつないだ部分入れ歯で、入れ歯を支える金具が前歯の裏にくる形になっていました。これは入れ歯が沈んでしまう設計です。入れ歯が沈むと奥歯よりも前歯にばかり力がかかり、力で前歯がグラグラになってきます。奥歯の歯数が減ると上アゴの入れ歯は上アゴ全体を丈夫な金属で覆うことが理想です(写真参照)。実際に自分の口の中を触ってみればわかるのですが、写真の赤で囲われた上アゴの真ん中の部分は骨格的に硬く、入れ歯が沈まないようにサポートするのに適した場所なのです。

米国の専門書。上アゴは広い面積を金属で覆うことが推奨されています

しかし、このように上アゴ全体を丈夫な金属で覆う方法は、健康保険の入れ歯では認められていません。

治療前の様子

また、この方は、下アゴが上より大きいく力の強い咬み合わせでした。
もともとアゴの骨の性質は上下で異なります。上アゴはスポンジのように柔らかい骨、下アゴは鎖骨に似た非常に硬い骨で、歯を支える強度は上下で異なります。人間には上アゴは頭にくっついていますが、下アゴ頭から離れており上下左右に動きます。例えるならば上アゴはお皿で下あごはハンマーです。ですので下アゴは食事をしている間、はたまた歯ぎしりをする間ずっと上アゴに打撃を与えます。このように「下が強い」噛み合わせが原因で、上の歯が悪くなっている方は非常に多いです。

この方の場合も下の歯は全く失われることなく、上の奥歯は失われ、今度は前歯が壊れてきています。入れ歯をしていたにも関わらず、前歯を支えることができなかったのです。

ですのでこの方は本当はインプラント治療が適したケースになります。前歯を守るためには、真ん中の前歯2本を抜いてブリッジにし、奥歯にインプラントを入れるのが最適でした。
しかし、この方は「インプラントは絶対いや」ということでしたので、ご相談の上、奥は入れ歯にし、工夫してなんとか作りましょうという治療計画に決まりました。入れ歯で前歯を守るためには、もちろん上アゴ全体を丈夫な金属で覆う方法です。

模型診断
治療前に立てたデザイン
左は治療前。前歯だけにとても大きな力が集中することがわかるでしょうか。
右は治療後のイメージ模型。奥歯によって前歯が守られるようになりました。

しかし、どうしてもわだかまりがありました。この方の下アゴは歯も骨格も非常に力強く、仮に上アゴ全体を丈夫な金属で覆ったとしても前歯を完全に守ることは出来ないのではないかと心配だからです。そこで、インプラントを左右の入れ歯の下に左右1本づつさせてほしい、費用はただみたいな感じでもいいですからとお願いしました。「ではインプラントをします」ということになり、左右1本ずつだけインプラントを入れることになりました。そのあと、患者様の方から「せっかく2本インプラントを入れるのに、入れ歯をするのは面倒。奥歯は全てインプラントをしたほうが入れ歯をつけたり外したりする手間はなくて簡単でいいのでは?」と尋ねられました。もちろんその通りですので、奥歯は全てインプラントで対応することを検討してみました。
またこの方は骨粗しょう症のお薬を飲んでいましたが主治医の先生と相談したところリスクもそれほど高くなく手術できる状況でしたので、やってみましょうということでお話がまとまりました。
写真は奥歯にインプラントを6本が入り、上の歯全体にリハビリ用の歯が入ったところです。なぜ、リハビリをするのでしょうか?それは前歯だけが残っていいる方は今咬める前歯のほうにアゴを出して咬む傾向があります。つまり本来の咬む位置よりも前方で咬んでいます。そこで本来のあるべき場所で咬めるようにリハビリの歯を作って練習をします。そうして歯列全体でうまく咬めるようになれば最終の歯に変えてゆきます。

インプラントが入り、リハビリ期間中の様子

インプラントに抵抗のある患者さんはいらっしゃいます。
人から聞いた話で否定的になったり、「怖い」と感じている方も多いようです。。この方も「怖い」ということでしたので、手術の日は静脈麻酔で、うたた寝のうちに手術を終えました。

インプラントに心配をお持ちの方は少なからずいます。そういう方々の多くが当院の「治療を受けた方々のアンケート」を見て、安心と勇気をもらっているようです。

もともとの「インプラントは嫌」から「インプラントをします」に考えが変わりましたが、あと3ヶ月くらいで本物の歯が入って治療が完了します。いまは仮歯の状態ですが、入れ歯を外して洗う手間もなくなり、不自由なくちゃんと噛めているそうで、この治療にしてよかったと喜んでいただいています。

■治療期間と費用
・治療期間:7か月を予定
・費用や治療法はインプラントのページを参照ください

■リスクと副作用

インプラントも日常の清掃やメインテナンスを怠ると、天然歯の歯周炎のようにインプラント周囲炎が起こります。お手入れや生活習慣、骨質や咬み合わせによって長期予後は変わります。全身疾患や状況によってはインプラント治療ができない場合があります