転倒して歯が抜けたときの正しい対処法

2018年05月7日 (月)
いくら歯のケアに気を付けていても、虫歯や歯周病などを原因とせずに歯が抜けてしまうことがあります。例えば、高齢者が転倒して歯が抜けてしまうといったケースです。そんな時に必要な対処法や、歯医者でどのような治療ができるのかについて解説します。

転倒などで歯が抜ける原因

転倒などで歯が抜ける原因

歯(特に永久歯)が抜ける原因として、多くの人が思い浮かべるのは「虫歯治療で歯を抜いた」「歯周病で歯が抜けた」だと思います。確かにこれらを原因として天然歯を失うことも多いのですが、実は病気やそれに類する原因以外でも歯が抜けてしまうことがあります。
マンガやアニメで頬を殴られて歯が抜けた描写を見たことがあるという人がいると思います。殴られた場合に限りませんが、頬や顎に衝撃を受けることで歯が抜けてしまうケースがあります。これを医学的に言うと「歯の脱臼」と表現します。
歯の脱臼とは、外から圧力がかかることを原因として歯と骨の固定が損なわれることを言います。具体的に言えば、歯を骨と固定している「歯根膜」という組織が断裂することを歯の脱臼と言います。その中でも、完全に歯が抜けてしまうことを「完全脱臼」と言い、歯根膜が一部分だけ断裂している状態を「不完全脱臼」と言います。この記事では、完全脱臼について解説します。

転倒で歯が抜けてしまったときの応急処置

転倒やその他の外傷によって歯が抜けてしまった時、適切な処置を行うことによって天然歯を保護することができる可能性があります。「歯が抜けたら人工歯に置き換えるしか無いのでは?」と思われるかもしれませんが、病気を原因としない歯の抜け落ちは、実は適切な方法を実践することによって天然歯を維持することが可能なケースが有るのです。
必要なことは、第一に「抜けた歯を保存する」ことです。抜けた歯を元に戻すためには、先ほど触れた「歯根膜」という組織が維持されていることが必要になります。そのため、歯根膜が損なわれないように、きちんとした処置をしなければなりません。具体的には、歯の保護液があればベストなのですが、無い場合が多いと思います。そこで活用したいのが「牛乳」です。抜けた歯を牛乳に漬けておくと歯根膜を保護できる可能性が高まります。ただし、開封してから時間が経過していると抜けた歯を保護できない可能性もありますので、できれば未開封の牛乳を使用してください。
もう一つ必要なのが「抜けた歯の『根っこの部分』を触らない」ことです。牛乳に漬ける前に歯の根っこの部分、つまり歯根膜の部分に触ってしまうと歯根膜が傷んでしまう可能性があります。むやみに根の部分に触ったり、清潔にするからと言って念入りに水洗いしないでください。触るのであれば歯の反対側、つまり普段見えている部分を触り、早めに牛乳に漬けてください。

適切な処置ができた場合とそうでない場合の治療の結果

適切な処置ができた場合とそうでない場合の治療の結果

歯の再植手術は、いかに「歯の歯根膜を保護できたか」によってその結果および経過が異なります。先ほど説明した方法で歯根膜を保護できれば、高い確率で歯を元の状態に戻すことができます。
治療においては、まず抜けた歯が割れていないことを確認します。次に、抜けた歯の周囲に骨折が起きていないことをレントゲンで確認します。問題がなければ、抜けた歯を元の位置に戻して、両隣の歯と接着剤でくっつけます。抜けた歯の状態が良く、早めに処置できれば高い確率で抜けた歯を元の状態に戻すことができます。
逆に、抜けた歯の保存状態が悪かったり、抜けてから時間が経過してしまった場合だと、歯を元の状態に戻すことが難しくなってしまいます。歯根膜に問題が生じた状態で再植手術を行った場合、仮に定着させることに成功しても問題が生じます。歯と、歯を支える部分である「歯槽骨」が直接くっついてしまい、歯の根っこの部分が次第に吸収されてしまいます。最終的に歯の根が完全に吸収されて喪失し、根っこを失った歯は自然に抜け落ちてしまいます。長くても数年でこうなってしまうため、最初から「インプラント治療」などで人工歯に置き換えたほうが良いケースが多くなります。

転倒などで歯が抜けたときの対応まとめ

転倒などの外傷によって歯が抜けてしまったときは、とにかく「抜けた歯を保護する」ことと「速やかに歯医者さんで診てもらう」ことが重要になります。抜けた歯をいかに良い状態で、速やかに歯医者さんに持ち込むことができたかによって、抜けた天然歯を元の状態に戻せるかどうかが決まると言っても過言ではありません。
場合によっては、抜けた歯の状態が良くない、あるいは周囲の歯や骨にも異常が生じている場合だと、再植手術ができない可能性もあります。その場合でも、歯が抜けた状態をいつまでも放置していては細菌感染等のリスクを抱えることになります。抜けてしまった歯の状態がどのような場合であっても、早めに歯医者さんに行くことを心がけてください。